西日本の縄文 27 2016.04.19-3
神石高原町立歴史民俗資料館 広島県神石郡神石高原町永野37-13 0847-86-0151 月曜休館 撮影可
じんせきこうげんちょう じんせきぐん じんせきちょう
交通 車
見所 ・帝釈峡地域には、日本有数の50余りの洞窟・岩陰遺跡があり、その代表的な遺跡の遺物を展示している。
・長期間にわたる洞窟住居が持続したため、独特な住居跡や埋葬、遺物が残されています。
・性神=帝釈峡地域に於いて、縄文の石棒文化が現代にまで生き続けていた土俗信仰。これについては大変驚きました。
時代 縄文時代
注意 旧石器遺跡もあるのですが、展示物は縄文時代からです。
感想 帝釈峡洞窟遺跡群の重要な遺物を展示しているにもかかわらず、来館者が極端に少ないのは極めて残念です。
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目
次 |
01外観
10帝釈峡遺跡群
石灰岩台地の形成
20帝釈観音堂遺跡
縄文時代の狩猟
石器石材の入手
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30縄文時代
縄文時代ってどんな時代
繊維土器
条痕文土器
中期前半
中期後半
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50弥生時代
弥生時代ってどんな時代
60古墳時代
古墳時代ってどんな時代
辰の口古墳
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70帝釈峡の縄文時代
帝釈峡の縄文時代の漁労
80帝釈峡遺跡群
帝釈峡縄文人の生活
縄文の石棒信仰が現代に生き続ける
90性神(民俗信仰)
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01外観
神石コスモドーム巨大な屋内球技施設です |
歴史民俗資料館 |
管理運営は地元の優秀な若者に委託されています |
神石高原町には沢山のスポーツ施設や文化施設があります。
一覧表 |
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10帝釈峡遺跡群
広島県北東部の石灰岩地帯に所在する、洞窟や岩陰遺跡の総称です (約50箇所)
縄文時代全般を中心に、旧石器から中・近世までの数万年にわたる遺物・遺構が見つかっています。
人骨・動物骨等が良好に残っており、過去の文化・社会・生活環境の解明が行われています。
石灰岩台地の形成
帝釈峡の石灰岩台地は、岡山から山口まで続く石灰岩層の一部です。中国山地の至る所にあります。
三億年前の古生代に、赤道直下で形成され、移動してきたものと言われています。
太平洋の海底は二億年で更新されるので、広大な石灰岩層は四万十層群の中に取り入れられてしまいました。
帝釈峡遺跡群 |
帝釈峡遺跡群 (上述) |
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帝釈峡遺跡群はほぼ
縄文遺跡が中心です |
帝釈峡の遺蹟群 |
帝釈馬渡岩陰遺跡
旧石器〜縄文移行期
帝釈寄倉岩陰遺跡
縄文全般の多数の人骨 |
帝釈名越岩陰遺跡
柱穴列・貯蔵穴・埋葬遺構
稲籾痕のある土器
豊松堂面洞窟遺跡
多数の埋葬人骨出土 |
帝釈穴神岩陰遺跡
縄文前期の埋葬人骨
帝釈観音堂洞窟遺跡
縄文時代全般の遺跡 |
帝釈大風呂洞窟遺跡
観音堂洞窟遺跡の直上 57mにあり同じ遺物出土
帝釈峡弘法滝洞窟遺跡
縄文草創期・早期。海産 装身具 |
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20帝釈観音堂遺跡
遺跡群中最大の洞窟遺跡です。縄文時代全般にわたって住居として使用されました。
関東や九州の土器が出土して、交流の一端が明らかになってきました。
発掘により、26の文化層が見つかりました。
2〜3万年前の後期旧石器時代後半の地層からは、絶滅動物や、現在の中国山地にはいない動物骨が出土し、
旧石器から縄文時代への動物相の変化も明らかになりました。
縄文時代の狩猟
旧石器時代終わり頃から縄文時代草創期初頭、今から1.5〜2万年前には、木の葉形尖頭器(木葉形尖頭器)が石槍として使用されました。
旧石器から縄文にかけてナウマンゾウやオオツノジカなど大型動物が絶滅し、中小型動物が中心となったため、弓矢を使うようになりました。
また、落し穴猟もさかんで、帝釈峡遺跡群からも多数の穴の痕跡が見つかっています。
石器石材の入手
出土した石器はサヌカイトと黒曜石で作られました。
サヌカイトは香川県金山産、黒曜石は島根県隠岐島産が大半を占めることがわかりました。人々は遠くまで行って入手していたのでした。
帝釈観音堂遺跡
縄文遺物が層位的に出土
関東〜九州の土器出土
2〜3万年前の絶滅動物骨 |
堆積層 |
狩猟動物
日本鹿・猪・狸・狐 大中
ムササビ・野兎 小
雉・ヤマドリ 鳥類 |
出土動物の比率
ムササビ・アナグマ・タヌキ等は毛皮取り用でしょ→ |
狩猟動物骨
動物によっては、イタチなどのように、臭くて食べられない動物もいます。
ムササビも同じです→ |
ニホンジカ
鹿・猪は、鳴き声以外は、全てが利用できます。 |
中小型動物 |
縄文の狩猟 |
縄文時代の狩猟縄文初期は大きく厚手の石槍を投げ槍として使用
小型動物に石鏃の弓矢を使用 |
鹿骨出土状況 |
石の道具 |
石材の入手サヌカイト-香川県金山
黒曜石-島根県隠岐島 |
帝釈峡に生息中の動物
キジ・ムササビ・キツネ
イノシシ
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石鏃 縄文各期
石鏃の形状が長年同形である。同一部族が住み続けたと想像される |
石槍 |
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その他、
大分県姫島産 黒曜石
広島県冠山 サヌカイト |
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30縄文時代 12000〜2600年前
縄文時代ってどんな時代
土器の発明により、食糧の煮炊きができるようになり、アクのつよい木の実や堅果類も食べられるようになりました。
重くて壊れやすい土器を持って移動はしにくく、定住生活をするようになりました。土器は縄文人の生活に大きな変化を及ぼしました。
帝釈峡遺跡群では縄文時代の前期に渡り洞窟や岩陰が住居とて頻繁に利用されました。土器は形が次第に変化し、各時代を知る手掛かりとなり、
帝釈峡遺跡群は西日本の縄文土器の指標遺跡となっています。
また、石灰岩地帯であるため、骨の依存状況に恵まれ、多くの動物骨・魚骨・貝も発見され、当時の食生活の復元にも役立っています。
縄文時代の想像図 |
弥生時代の想像図 |
縄文時代ってどんな時代 |
縄文草創期・早期押形文土器(変形山形文)
縄文早期中葉 豊松堂面遺跡 |
草創期の無文土器帝釈観音堂最古土器→
無文土器(草創期12000年前〜)第20層出土
帝釈峡観音堂洞窟遺跡 |
低温焼成のもろい土器 |
・押形文土器(変形山形文)
縄文早期中葉
豊松堂面遺跡 |
・押形文土器 早期中葉
観音堂洞窟第19層
・繊維土器 早期終末※1
第17層出土 |
繊維土器粘土に植物繊維を混ぜています |
前期土器
・条痕文土器※前期前半
二枚貝の条痕 修復土器 |
縄文土器 前期
帝釈観音堂洞窟遺跡 |
条痕文条痕文の上から刺突文や爪形文で模様をつけています。
刺突文のものが爪形文より古い時期の土器です。 |
縄文中期土器※3 |
中期前半 中期後半 |
中期前半-縄文上に刺突 文・爪形文や線で施文
中期後半-撚糸文の上に 線で施文
撚糸文-棒に撚紐を巻き付け転がしたもの |
縄文中期後半 |
後期・晩期の土器縄文を部分的に磨り消す磨り消し縄文が特徴的 |
磨消縄文土器 |
磨消縄文土器 |
縄文後期土器 |
縄文晩期土器
縄文時代最後期の土器 |
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※1繊維土器 粘土に植物繊維を混ぜて作りやすくした土器
※条痕文土器 二枚貝の貝殻で表面を調整した土器。
※3中期前半で特徴的なのは、縄目文様(縄文)です。縄を転がして付けた縄文の上に刺突文・爪形文や線で模様をつけています。
中期後半で特徴的なのは、棒に撚糸を巻き付けたものを転がしてつける撚糸文です。上から線で模様をつけています。
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50弥生時代 2600〜1700年前
弥生時代ってどんな時代
縄文時代までは、食糧を狩猟採集に頼っていましたが、弥生時代には食糧を自ら生産するようになりました。
今日に続く日本の米食の起源はこの時代に求められ、更にそれは中国大陸、そして朝鮮半島を経由して伝わったことがわかっています。
稲作の発達に伴い、社会の中に格差が生まれ、墓や住居など明らかに他の人とは異なる規模を持つような者も出現してきました。
弥生時代中頃以降、中国地方では「四隅突出墓」という独特の形をした墓が、中国山地や日本海側に築造されます。
後期になると、出雲市の西谷墳墓群では、一辺の長さが50m高さ5mの大きさを持つものが築かれ、地域の王が出現したと考えられています。
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60古墳時代 1700〜1400年前
古墳時代ってどんな時代
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近畿地方を中心に日本全国で「前方後円墳」が造られた時代です。
この古墳は、北は岩手県から南は鹿児島まで確認されており、各地の有力首長で、大和政権との結びつきの強かった首長だけに許された特別な墓です。
有力首長の古墳には様々な副葬品が見られ、古墳時代初め頃は中国製鏡が、中頃には甲冑、終わり頃には馬具が見られ、
当時日本に伝わった最先端の器物が古墳に納められています。
神石高原町で広島県で二番目に大きい辰の口古墳が見つかっており、神石にも畿内と結びつきを持った有力首長が存在したことが明らかになりました。 |
辰の口古墳
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全長77m、後円部直径南北41m・東西36m、高さ7.3m、前方部幅24m、高さ4.9m。備後細大の前方後円墳。
出土した埴輪は古墳時代前期中頃 (4世紀中頃) のもので、広島県内最古のものです。
整った形の墳丘や大きな竪穴式石核など、畿内の影響が強く、かつて神石を中心とした備後北部を納めていた首長は
畿内勢力と密接なつながりがあったものと想定されます。 |
古墳時代ってどんな時代広島県第2位辰の口古墳 全長77m |
辰の口古墳
前方後円墳 古墳前期 4世紀頃 朝鮮式 |
須恵器須恵器 窯で焼いた薄くて硬い祭祀用土器 |
提瓶・ハソウ・壺・平瓶・高坏 |
高坏 |
ハソウ・壺・平瓶
須恵器以外の出土品
鍔・管玉・耳環 |
壺 |
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70帝釈峡の縄文時代
石錘 |
鹿角製釣針 川釣りでは大きすぎる。海産貝との交易品だろうか。オオサンショウウオ釣りか |
淡水産貝 ドブガイ・シジミ・マルドブガイ |
シジミ・カワシンジュガイ |
カワニナ出土状況 豊松堂面洞窟遺跡10層 |
カワニナ 蛍の餌です 縄文時代には、蛍が沢山飛び交う美しい光景だったでしょう |
貝製耳飾り・海産貝 |
貝製耳飾り/クチベニ貝・キセル貝・ハマグリの破片を使用 |
貝製腕輪/サルボウは伊豆諸島南部産の貝です |
サルボウ・ハイガイなどの海産二枚貝で、殻が大きく厚みのあるものを加工して腕輪にしていました。 |
海産貝 |
骨格製垂飾 |
石錐・石製耳飾り石製耳飾り・石錘 骨格製垂飾 |
猪の牙製品猪牙は装身具・ヘラ・刺突具などに使用 |
骨ヘラ動物皮革に穴を開けたり衣類を縫うのに使用したり、髪飾りなどに使用した |
磨製石斧砥石で研磨し、木の伐採や加工に使用 |
磨石と石皿木の実を磨り潰す道具 |
石匙・スクレイパー剥片の縁を細かく打ち欠いて刃をつけた石器。
ツマミを付けた物を石匙。皮剥ぎ・肉切等万能ナイフ |
サヌカイト/縄文後期石器原材料・剥片 |
サヌカイトの石核 砕片 |
石鏃・スクレイパー 石核剥離 |
鹿角・敲石/石器製作道具 |
石器製作剥片を得る |
加工する 縁を打ち欠いて刃を作り整形する |
帝釈峡の縄文時代の漁労※1漁労 石錘・釣針出土 |
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コイ・フナ・オイカワ・ニゴイ・ギギ・ナマズ・ウナギ・オオサンショウウオ |
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※1帝釈峡の縄文時代の漁労
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遺跡からは網漁に使った石錘が出土しています。また、帝釈観音堂遺跡からは、鹿角製の大きな釣針も見つかっています。
帝釈峡の縄文人たちは、川や淵で、網や釣針を使って漁をしていました。
それでは、どんな魚を食べていたのでしょうか。帝釈弘法滝洞窟遺跡で細めのふるいによって調査したところ、現在も帝釈川に棲んでいる
コイ、フナ、オイカワ、ニゴイ、ギギなどの魚類を食べていたことがわかりました。この他、ナマズ、ウナギ、オオサンショウウオの骨も発見されています。
また、帝釈縄文人はカワニナなどの川の貝も食糧にしていました。豊松堂面洞窟遺跡では、10p以上の厚さにカワニナが堆積しており、
大量に採られていたことがわかりました。
そのほか、天然記念物のカワシンジュガイ、マシジミ、カラスガイなども食べていたようです。 |
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80帝釈峡遺跡群
帝釈峡縄文人の生活
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帝釈峡は石灰岩地帯で天然の洞窟や岩陰が沢山あります。 洞窟や岩陰は風雨を凌ぐのに最適で、この地に暮らした縄文人たちは住居として領していました。
洞窟内では火を使う炉が設けられ、その周りで暖をとったり、炊事もしていました。洞窟や岩陰の住居は縄文時代の長期にわたって利用されていたようで、
焼土や灰層などが厚く何層にもわたって残っています。
狩りで得た獲物や川で捕った魚貝は食糧として洞窟に持ち帰り、秋には周りの森で沢山の木の実が採られました。
こうして野山で得た食糧の調理には土器も使われました。そして、狩りで得た動物の骨や牙も様々に加工して使っていました。
また、帝釈峡の縄文人たちは山間に暮らしていましたが、海の貝で作られた装飾品も入手していました。
この時代は現代のような墓地ではなく、人が死んだら彼らの住居とする洞窟の奥の方に穴を掘り、足を曲げて丁寧に埋葬していました。
豊松堂面洞窟遺跡では屈葬と呼ばれる足を折り曲げて葬られた10体ほどの人骨が出土しています。
上帝釈の寄倉岩陰遺跡では50体分以上もの頭骨や手足の骨が壁際にまとめられた状態で出土しています。
別の場所で一度埋葬し、改めて岩陰に再葬したものです。 |
帝釈峡の縄文人の生活 |
帝釈峡縄文人の生活豊松堂面洞窟10体の埋葬、寄倉岩陰では50体以上の再葬骨出土 |
帝釈岩陰遺跡の復元沢山の柱で壁を作り間仕切りをしていた |
名越岩陰遺跡 |
観音堂包含層断面 |
人骨 屈葬・抜歯痕 |
洞窟遺跡の埋葬人骨
縄文後期 |
遺蹟群の位置図 |
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縄文の石棒信仰が現代に生き続ける
90性神
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昭和30年代まで、日本の各地で村境いや入口に、巨大な石棒や、男根が立っていました。
これは、地中から再発見されたものを立てた考えられます。
しかし、帝釈峡のものは、性の神としての、縄文の信仰を受け継いだものと思われます。
安産祈願や、乳の出が良くなるように祈願したりするために、形を変えたものを奉納するようになりました。
信州安曇野の道祖神は、もとは男根が立っていたものを、明治の民俗学者柳田らによって批判され、同じ意味を持つ男女の石像に換えたものです。
ですから同様の物は全国にありました
京都・宇治の縣神社の祭礼などは男根と男女××の祭りです。後の方は鎌倉時代以降の発生かな。盆踊りは元、そういったものだったようです。 |
性神(民俗信仰)乳房と男根。性交を表す造形物が置かれている。 |
石棒信仰が現代にも
生きている証拠です |
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